2009年10月5日月曜日

オランダの医療について

最近、日本の癌患者が書いた本を読んで、びっくりしたことが色々あるので、「私、オランダで治療してもらって本当に良かったなぁ」と思っている理由を書いてみたいと思います。

オランダの医療で一番すごいことはやはり「無料」だと言うこと!って、本当に無料な訳はないので、月々の保険料は国民全員が払わないといけないんですね。これは国民健康保険とでもいいますか。みんな自分が好きな保険会社を選んで、基礎の部分の支払い&それ以外のオプションを色々つけてます。でも、基礎の部分で殆ど重要な部分はカバーできるわけです。つまり、癌の治療には1セントたりとも払う必要がないんですね。抗がん剤を打たれようと、その副作用を和らげるとんでもない高い注射をもらおうと、手術を何回しようと、入院日数が延びようと、全部タダ。なので、お金の心配することなく必要な治療が受けれるのです。お金のかかる癌治療の場合、自己負担のある日本と比べるとこの違いは大きい!例えば、私の処方された抗がん剤中の副作用緩和の注射、1本20万円近いものでした。これを結局5本使いました。今は毎月1本2万5千円位の注射を打ってます。これは今後5年続きます。抗がん剤の値段は知りませんが、日本では1回100万円近いとも聞いています。。。手術は最終的に計3回。一回につき、いくら位かかっているんでしょう???って考えていくと、月々の保険料以外の自己負担が全くないこの医療システムは本当にありがたい。確かにこの国の税金高い(所得税の最高税率52%!)けど、癌みたいな大変な病気した人がお金の心配せずに治療が受けれるのなら、私も元気になったら文句言わずに税金払おう!と思いました。

お金の話の延長で行くと、保険の適用範囲がとても広い。例えば、胸の再建は乳癌治療の一環と認識されるので、こちらも保険で全額カバー。日本は自己負担?抗がん剤&ホルモン療法の副作用で必要となった不妊治療(卵子を取り出して受精卵を凍らせてくれ、さらに治療が終わったらそれを着床できるよう戻してくれる)も保険適用範囲。医療用カツラも最低額まではカバー。精神科医も、リハビリも、大部分が保険適用範囲。入らない部分は保険のオプション(月々数千円)でカバー。結局殆どお金が要らないんですね。何もかも治療の一環としてもらえるのは、日本では考えられないと思います。

次に進んでるなぁと思うのは総合医療。つまり、私という人間を総合的に治す為に各分野の専門家が色々連携して治療に当たってくれるんです。例えば、「癌です」と言われた時に外科医が言ってくれたのは、「胸を全部取らないといけないけど、胸の再建という選択肢もあるよ。必要なら形成外科を紹介するから」と。抗がん剤の説明を受けた時、内科医は「治療の副作用で子供が出来なくなる可能性があるけど、治療が終わってから子供を作る為に卵をとっておくという選択肢もあるよ。必要なら産婦人科を紹介するから」と。取った癌の説明をしてくれた外科医は「君の場合、とても若いから、遺伝かどうか調べる方法もあるよ。自分の家族の為にそれを調べたければ、遺伝子科(?)を紹介するよ」と。それ以外に何かリクエストがあれば、看護婦さん達も含めてみんなで助けてくれるんですね。癌専門の精神科医の紹介、医療用カツラの紹介、癌患者の為のリハビリの紹介。
さらに「これはすごい!日本に絶対ない」と思えるものが癌患者のためのビューティーセミナー。ハゲになったり、眉毛&まつげがなくなったり、顔色が悪くなる癌治療。それをいかにうまくカバーするかがこのセミナー。ビューティー・スペシャリストが病院に来て、カツラの選び方、かぶり方から、眉毛のかき方、顔色を良くする方法を教えてくれるんです。実際に企業の寄付でもらった化粧品を使いながら、みんなでお化粧。そうすると、さっきまですごい病人顔だった患者さんが一気に健康な外見を取り戻すんですね、これが。で、ビューティー・スペシャリストが一言、「すごく元気な顔になるでしょう?でも、診察の時はちゃんと化粧のせいって担当医に言ってくださいね。でないと、本当に元気だと思われますよ~」って。

最後に、医者の患者に対する態度。(上から下へ物言うって感じの)先生ぶってないんですね、こちらの医者。(ま、これはオランダの文化がフェミニン文化だからという別の話になるのですが)どちらかと言うと、患者はお客様の扱いに近いというか。。。だからセカンド・オピニオンの話しても「うん、うん。納得できたほうがいいから行っておいで。どこの病院に行きたいか言ってくれたらそこを紹介するから。手術は早いほうがいいし」ってすぐさま資料を全部そろえて出してくれた外科医。抗がん剤治療の最中に「治療が長くなって息切れがしてきた。彼のお誕生日に旅行をプレゼントしたんだけど、行ってもいい?」と言い出した私に「あぁ、いい気分転換になるから行ってらっしゃい。」と即答し、旅行にいけるよう、抗がん剤の日程まで考えてくれて、何かあったときの為の準備まで考えて快く送り出してくれた内科医。日本ではセカンド・オピニオンなんて嫌々だす、或いは書類を渡さない、とかいうこともあるとか。勿論、医者によるのかもしれませんが、私はここで良いお医者さんに恵まれて、本当にラッキーだったなぁと本当に感謝してます。というわけで、ますます私のオランダ化に拍車がかかる今日この頃。

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