2011年10月18日火曜日

海外に長く居すぎた…と実感するとき【ファッション編】

なんだかウケがいいこのシリーズ、略して「浦島さんシリーズ」今度はファッション編を・・・

1. 帰国の度に「ほう、今こんなファッションが流行ってるんだぁ」と感心するとき
日本ではみんなが同じモードを追いかけるので、その変化がわかりやすい。

2. と同時に、どの子を見ても「おんなじに見える」と思うとき
同じファッションで細かい違いにこだわる日本人。思考回路が外人になっちゃってるとそのちょっとした違いはわかりません(汗)

3. 特に行き過ぎちゃったファッションの子を見て「うわっ、キモ!」と思うとき
先日、飲食店ですごいつけまつげの女の子がいた。正直、自分のオーダーは不潔感いっぱいにみえる彼女に触ってほしくないと思ってしまいました。

4. 鼻が低くかろうと、目が細かろうと、まつげが短かろうと、「そーんな整形や化粧でいじらなくてもいいのに!」って思うとき
何をやっても西洋人の鼻の高さ、目の大きさ、まつげの長さにはかなわない。それならアジアンビューティーでいいじゃん!って思うのは私のあきらめかぁ???

5. どの子も風に吹き飛ばされちゃいそうなくらい細いな~と感心するとき
丸めのラインが好まれるヨーロッパにいますんで・・・(笑)

6. こっちで「ほんとスタイルいいね♪」と褒められてにんまりするとき
そう、日本で太めはこちらで標準。日本で標準はこちらでは痩せすぎ。やっぱいい国にいるわ!(爆)

7. 自分のサイズが日本サイズで言えないとき
イギリスサイズも、アメリカサイズも、イタリアサイズも、フランスサイズも、ゲルマンサイズもわかるけど、日本のサイズだけはわかりません。てか知りたくないかも!?ま、どうせ日本じゃ買わないからいいけどさぁ~♪

8. どんなに脚がきれいと言われている日本人を見ても「そうかな?」と思うとき
だって西洋人って、どんなにデブでも足だけは細くて長くてキレイなんだもん

9. 「その格好で寒くないの?」と聞かれるとき
北国の気温に慣れると日本の冬は暖かいんですもん

10.知らない人が自分の胸元を凝視してるのに気づいたとき
胸元が開いてる服、体のラインが出る服が多いこちらのファッション。色んなサイズの人が当たり前のようにそういう服を着ているので、私のスタイルで凝視されることは皆無。でも日本だと襟ぐり大きく開いてたり、胸の形がぴったり出る格好してる人なんていない。

てかどうせ見るならもうちょっと遠慮してこっそり見なさいよ(怒)

と思うのは私だけ?

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2011年10月17日月曜日

オランダの医療事情13

抗癌剤を始める直前か、始めてすぐのある時、新聞に面白い記事が出ていました。内容は「がん患者のためのビューティーコース」。放射線治療や抗癌剤で、髪、まつげ、眉毛が抜けたり、吐き気で顔色が悪かったり、という患者さんの為に、いかにそれをうまくカバーして病人に見せないかを教えてくれるというもの。 

これはボランティアのエステティシャンによるコースで、幸運にも私がお世話になっている大学病院の一角で数ヶ月に1度開かれているものでした。大学病院内で開かれるということは、病院側もある意味協力してくれている訳ですから、その辺はやはり「さすが!」と思いましたね。ということで、病院に行ったついでに予約を入れて行ってきました。 

当日は女性ばかり10名くらいが集まりました。大テーブルを囲んで座り、一人一人に化粧品会社などから提供してもらった化粧品セットが配られます。そして化粧の仕方を習います。 

といっても患者さんの為の化粧なので、抜けてしまった眉毛を上手に描くテクニック、描いた眉毛を1日消さずに持たせるにはどの化粧品がいいか、どこに色を持ってくると健康な人のように(くすみがなく血色よく)見えるか、などを参加した患者さんに化粧をしながら教えてもらえます。 

さらにウィッグの選び方、かぶり方、取り扱い業者、に始まって、ウィッグにスカーフをつけたり、帽子をかぶったり、なんて応用テクニックも親切丁寧に教えてもらえます。また、普段ウィッグをかぶらない時に丸坊主の頭をスカーフで包む方法なんかもここで教えてもらったことです。普段は自分一人で治療と向かい合っていても、こういう所で患者さん同士の交流ができたこともよかったことの一つと言えます。 

でコースが終わる頃には、さっきまで抗癌剤の点滴をつけ、どこからどうみても血色の悪い病人にしか見えなかった女性達が、普通の健康な女性へと大変身していました。(って私もその一人だった訳ですが!)でエステティシャンが最後に一言

こうやって化粧の仕方一つで健康にみえるように簡単に変身できます。でも、化粧して診察を受けるときには必ず「これは化粧です!本当は具合が悪いんです。」というのはきちんとお医者さんに伝えるようにしてくださいね。でないと健康だと思われて、ちゃんと診てもらえないと困りますから!

確かに・・・

ということで、抗癌剤の最中も見た目は健康そのものの状態を保って外出できたのはこのコースのおかげ。唯一困ったのは、余りにも健康に見えるため、優先席を譲ってもらえないし、運よく席があいていてもそこに座ろうとするとすごい目で見られること。「いや、本当に病人なんですってば!」と心の中でよく叫んでました(笑)

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オランダの医療事情12

外科での治療が一通り終わった段階で、「抗癌剤するので内科へ行って下さい。」と言われ、すぐ内科送りとなりました。初めての内科の診察で聞かれたのが

あなた、子供はいますか?いないのなら作る気はありますか?

「って、抗癌剤とどういう関係があるんだ???」と思うような質問。色々あってそろそろ子供でも?とちょうど話していた頃に癌が見つかったので、そのままになっていたこと。で、そのように答えた所、医者から言い渡されたことが、

抗癌剤投与で、婦人科系は機能しなくなります。つまり、自然に妊娠することは99%の確率で不可能になります。

手術で乳腺をとるということは女を失うことだと思っていましたが、まさかことごとく女としての機能を失うことになろうとは思いもよらなかったことの一つです。まぁ、生きるか死ぬかとやっている時に、女がどうとかいう次元ではないというのは頭で分かっていても、感情がそれを受け入れることができるかどうかはまた別問題だったりします。

日本でここまで説明して抗癌剤投与をされているのかどうかは知る由もありませんが、オランダではそういうことを説明した上で

治療が終わってから妊娠できるように産婦人科でその可能性を話してきますか?不妊治療の一環でどこまで出来るのかは私には分かりませんが、もしかしたら卵子か受精卵を保存するというのが出来るかもしれません。まだ実験段階かもしれませんし、詳しくは産婦人科で聞いてください。

ということでとりあえず産婦人科へ行くことになり、それまで抗癌剤投与を待ってもらうことになりました。知り合いの腫瘍内科医も「まだ手法としては確立されてない実験段階だと思われる」と言っていた不妊治療。あまり期待もせず産婦人科へ行ってみたらなんと「あなたは特別のケースだから」と産婦人科の教授がお出ましになり色々説明をしてくださる。結論から言うと、

癌の再発リスクを抑えて妊娠することは可能。そしてその為には色んな方法があるが、とりあえず受精卵を冷凍保存させておくのがいいでしょう。ちなみにこれはすでに確立された方法で、これで何人も出産しています。まぁまだ子供が成人になってるケースはありませんが。

ということで、早速その冷凍保存の為の手続きに入ったのはいうまでもありません。選択肢は多い方がいいですから。ということで、これが私のプランA。これでダメだったらきちんとプランB以下も用意されています(笑)

ちなみにオランダでは、産婦人科の不妊治療を受けるには最低数年待ちと言われています。そして色んな手順を踏んでやっと治療が始まるわけですが、私の場合は抗癌剤投与を待ってもらっている関係上、とにかく『大至急』で受精卵を作る必要があり、色んな手続きをかなりハショってもらって初めの診察から冷凍保存までかかった時間わずか1ヶ月弱。「私みたいな迷惑飛び入り患者がいるから、数年も待たされるのか!」と思う反面、踏んだり蹴ったりの治療中に一瞬でも希望をみせてもらえたこの治療は本当にありがたかったことでもあります。

日本ではまだここまでしてもらえないと聞いていますが、本当にできないわけではないと思います。形成外科だって、不妊治療だって、それだけならできる施設もあるはずなんですよね。問題はそれを患者が自分で探してこない限り、受けれないことなのではないかと思います。要は横の連帯さえうまく機能すれば出来る話なのに・・・と思うと残念な話しだなぁと思います。こういう患者の心理的なストレスの軽減に関してはオランダでは色んなリサーチが行われていて、そういう分野は実はかなり進んでいるのではないかと思います。(つづく)

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2011年10月14日金曜日

海外に長く居すぎた…と実感するとき【買い物編】

先日、友人のTweetでみつけた記事がこちら。 
外国人が日本に長く居すぎた…と実感するとき
http://labaq.com/archives/50779932.html

これの逆バージョンが私!?ということで、「私が日本で感じること」というお題でまんまパクってFacebookのNoteに書いてみたら、なかなか好評だったので(?)番外編を・・・ 

1.「いらっしゃいませ」と言われて「どうも~」と挨拶を返して変な顔されるとき
「いらっしゃいませ」という挨拶がない国ではその代わりに「ハロー」と挨拶されるので、必ず「ハロー」と挨拶を返します。

2. デパ地下のバラエティあふれる食品に目をうばわれているとき
はい、デパ地下自体がありませんから!

3. レジのベルトコンベアがない!買い物した商品はどこに置くの???と思うとき
こちらのスーパーにはレジのところに小さなベルトコンベアのようなものがあり、そこへ買いたい商品を置いておくと、自分の番になるとそれが動いて、レジでバーコードをピッてしてもらえます♪

4. スーパーの買い物袋がただでついてくるのに感動するとき
こちらのスーパーの買い物袋は有料。なので、一度買って使いまわししするか、マイバックを持参

5. 買い物袋がただでついてくるだけでなく、それに全部入れてもらえて感動しまくるとき
基本、なんでも「自分でやれ!!!」の個人主義の国ですもん・・・

6. コンビニの存在自体、感動ものと思うとき
だって24時間開いてるお店なんてありません(泣)

7. 土曜日にまとめて買い物しなくても大丈夫なんだと思うとき
キリスト教では日曜日は休息の日。はいぃー、お店、基本的にしまってますがな~

8. 1円玉が使いこなせなくて、財布にたまって財布が妊娠してるとき
この国では1セント単位は四捨五入。つまり5セント以下は使わずに生活してます。

9. スーパーの魚売り場の大きさに感動するとき
肉食動物の住む国では、魚売り場はその辺の一角だけ。しかも、鮮度悪すぎて食欲減退もいいとこだし・・・

10. 食べたいものを自分で作らなくても、すぐ買って食べれることに感動するとき
だって日本食がたべたいんだもーん♪ でもおにぎりなんてどこにも売ってないし・・・

今のところ、思いつくのはこんなとこですかね?

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オランダの医療事情11

オランダの病院へかかると、まず患者番号なるものがつけられます。そしてこの番号に自分の名前、生年月日、保険会社名とその保険番号、ホームドクター名などの最低情報がコンピューター上に登録されることになります。これらはバーコード管理されるので、カルテ、採取した血液、処方箋、などいたるところでこのバーコードのシールがペタペタ張られることになります。

基本的には医療関係は全て生年月日を基準にして検索されるので、ホームドクターでも、病院でも、薬局でも、まずは自分の生年月日を声を大にしていわねばならず、待合室で人がたくさんだと普段若く見られるのが自慢な(?)だけに「自分の年がバレるのやだな・・・」とか思うことがよくあります。(苦笑)

で、この登録は診療記録でもあります。すなわち電子カルテが直結していて、うちの大学病院の場合、全ての記録が共通データベース上に保存されています。つまり私の誕生日を打ち込むと、いつ、どこの科で、どんな治療を受け、どんな薬を服用していて、云々・・・というのが芋づる式に全部出てくることになります。

骨を折って整形外科にお世話になって完結する人などであればこの共通データベースのありがたみは余りないかもしれませんが、私のようにありとあらゆる科を渡り歩いている患者の場合、新しい科へ行く度に一々どこで何したかという説明をしなくても済む、というのはとてもありがたい話です。

そして各科の診察ではこれらの履歴も考慮して診断してもらえます。例えば、今声が出なくなっていて耳鼻咽喉科でお世話になっていますが、まず「喉頭癌の可能性はないか?」という所から始まって、「胃液の逆流の可能性は内科で処方されている薬が原因ではないか?」など。このように横の連携がスムーズなので、患者としては丸抱えで診てもらえている安心感があります。

ちなみに病院の初診のアポが取れるまでに相当待たされる、というのは前にも述べた通りですが、一度患者になってしまえば、外科から内科、内科から婦人科、というように病院内の別の科に行くのは比較的スムーズともいえます。まぁ専門医が必要と判断して別の専門医へ送るということが簡単にできるのが総合病院のいい所なので、当たり前と言えば当たり前ですが。

とはいえ私が場合お世話になっている科は「腫瘍外科」や「腫瘍内科」。病院内でも『がん患者=優先順位トップ』という扱いであった為、この別の科への横滑りもかなりスピーディーでした。でも「癌とさえ言っておけば、なんだか水戸黄門の印籠効果をもたらしてないか?」と思うこともしばしば。え、それを悪用しなかったかって?それは想像にお任せします。( ̄▽ ̄)


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2011年10月12日水曜日

オランダの医療事情10


唐突ですがオランダの所得税はとにかく高いです。初めて働きはじめた時、給料から差し引かれたのはその当時36%(?)とかだったと記憶していますが、それを聞いたうちの父親が言ったのは「お前、そんなに稼いでるのか?」初任給でそんないい給料をもらえるわけもなく、ただ単に所得税率が高かったというだけの話ですが、現在の累進課税で所得税の最高税率は52%。そう、一生懸命働けば働くほど政府が潤うようになっています。


この国に住んでお給料をもらう限り選択の余地は勿論ありません。ですから働いている頃は元々の給料額をみてから手取り額を見ると頭にくるので(笑)、ある時から手取り額しか見ないようになっていました。そして52%納税者に共通の考え「働いているものがバカを見るシステム」と長らく思っていました。そう、病気になるまでは・・・

考えが一転したのはいきなり大病をした時。その当時は働いていましたが、転職したばかりで1年契約だったのです。そして入院して治療を受けている間に契約は切れ、金融危機もあって契約更新はされずいきなり無職になったのですから、泣きっ面に蜂もいい所です。

ところがだてに52%もの所得税を取られているわけではないんですね。まず無職になると生活保護がでます。本来ならそんなに金額が出るわけではないのですが、「病気で働けない人」の為の生活保護は別カテゴリーとなり、これまでの給料70%(?)だかが無条件で最高2年まで支給されます。とはいっても当然上限があるので、私の場合はそれでもそれまでの給料の半分以下でしたが、でも普通に生活していくには困らない額です。

そして2年以上たつと今度は普通枠の生活保護になるはずなのですが、私の場合は「病気だから」とかなんとか色んな理由がついてこれまでとあまり変わらない額を支給されています。実際、病気の治療でさんざんな目にあっている時にお金の心配までしなくてすむというのは本当にありがたい話です。とはいっても私みたいな人間は不遜にも「これまで払った税金とりかえしてやる!!」位の気ではありますが・・・(笑)

さらに医療費は無料です。正確に言うと、国民保険はオランダに住む人は強制加入となります。月々の保険料は、保険会社に多少の差があるものの大体1万円弱位ではないかと思います。そして基本医療費(医者の診察料、必要不可欠な薬など)はこれで全てカバーされます。それ以外にオプションで歯医者の診察料、針や整体などの治療費、精神科医の診察料などをカバーする保険にアップグレードすることができます。私の場合は元々、細々と病気をしていたので、最大限アップグレードしていたのが病気してから役に立ちました。

ちなみにアメリカでも問題になっている保険料が払えない低所得者ですが、オランダの場合は政府から保険料の還付があります。つまり、そういう人たちは完全に無料で医療が受けることができると言えます。とはいえ、毎年最低限の自己負担額というのが設定されており、初めの15千円程度は自己負担をし、それ以上は保険でカバーされる仕組みになっています。つまり、全てが全て無料で医療費が垂れ流されている訳ではありません。

ちなみに私の治療を例にとって説明すると、ホームドクター、大学病院の診療、精神科医、抗癌剤中の交通費、処方される薬、理学療法士の治療、全てがカバーされました。さらに、抗癌剤中に髪の毛が抜けている間に着用したカツラ、抗癌剤後の癌患者の為のリハビリコースなども大部分の費用がカバーされました。さらに癌が遺伝だと分かった時点で毎年の自己負担額の一部還付までありました。理由は「遺伝の人の場合、定期健診や検査などが絶対に必要で、毎年自己負担額が発生し、それが不可避だから」なんとも至れりつくせりなシステムだなぁと思う訳です。

病気になって日本で治療を受けている癌患者の方とお話する機会があっていつも言われるのは「治療がタダなの?いいわねぇ~」確かに、抗癌剤1回の自己負担額を聞くと「これを毎回払えるかどうかが、自分の寿命を決める訳か?まさに命の値段だよな」と思います。が、日本とオランダの所得税率の違いを考えると、最終的な生涯コストにして計算すると同じなんではないかと。要は毎月チマチマ(って結構いい額ですが・・・汗)源泉徴収されて否応なく払うか、病気になった時にまとめて払うかの違いとでも言いましょうか。まぁそうやって考えると、日本の貯金額は世界一とかその昔言われていたのもそれなりに納得できるわけです。 (つづく)


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2011年10月11日火曜日

オランダの医療事情9


至れりつくせりの入院生活で困ったのは、やはり病院食。元々食文化としては文化がないと言っても過言ではないオランダ。そんな国の病院で、おいしいものが出てくるわけがあろうはずもなく、要領を得るまでにちょっとばかり時間がかかりました。


まず、朝と昼はパン食です。サンドイッチの厚さの食パン2枚。これは白かブラウン(全粒)かが選べます。ところが配膳中に乾燥するのか、パリパリで食べれたものではないんですよね。ということで、子供のようにパンの耳を大きく残して中だけくりぬいて食べたりしてました(笑)

ただ、後になって分かったのですが、食パン以外にもスウェーデン風の乾燥クラッカーや、オランダのライ麦パンなども選べ、こちらは袋詰めの市販のもので乾燥や湿気とは無縁の状態。それに気づいてからは毎回こちらの方を頂いていました。

で、問題はパンにつけて食べるもの。あるのはバター、マーガリン、ジャム、チョコレートペースト、ハム、チーズ。手術後、甘いものが欲しくなくなり、しょっぱいものだけ欲しい私にとって、選択はハムとチーズしかない。「えぇっと、どちらも食べれないんですけど・・・?」基本的にバターもマーガリンも使わないので、食べようがない!という状況に。どうやって、この病院食をサバイバルしたのか余り記憶にないのですが、家からの持ち込みでなんとかしのいだような???

運がよければこれにりんごやオレンジなどの果物も選べ、後は数あるジュース類、コーヒーか紅茶、カップスープ位ですね。果物はともかく、ジュースもコーヒーも紅茶も基本は飲まない人間にとって、どんなに色々あっても自分の口に入らないものであればあってもなくても一緒!まぁ看護師さんにも「普段何食べてるの?」と驚かれるわけです(笑)

そして午後になるとその日の夜のメニューの希望用紙が回ってきます。メインディッシュは2種類から選べ、主食はジャガイモかご飯かパスタか、その日のメニューによって選べるものが変わってきます。さらに半人前、1人前、1.5人前から量が選べるので、食欲がない時などはあらかじめ半人前だけお願いしたりということもしていました。

さらにソース大好きなオランダ人の為に、塩&こしょうだけでなく、ケチャップやマヨネーズ、サンバル(インドネシアのチリソース)などメニューによって選べるソースもありました。そして毎晩デザートがつき、これはヨーグルトとか、フラ(オランダのカスタード)などでした。

今、健康になってみると悪くないメニューとも思えるのですが、入院中は全く砂糖類が欲しくなかったので、デザートは全て食べられない、肉も魚も一口がいいところ、パスタに至っては伸び切ってしかもまずそうなソースとあえてあるのを見た瞬間「誰かこの皿の上に吐いちゃったわけ?こんなの食べれないわ!」とそのまま手をつけずに返したり、とまあほとんど食べなかったという記憶しかありません。たまーにそれでもこれならってものが出てきてましたけど、ほとんどは仕事帰りにお見舞いに来てくれていたうちのクマの胃袋に収まっていましたね。特にデザートなんてなめるように食べてたし!(爆)

食事の合間にはワゴンで飲み物を持ってきてくれます。と言ってもジュース、コーヒー、紅茶という私が飲まないものしかないので、頂いていたのは水とストロー(動けないときは、これがないと何も飲めない!)だけでしたけど。

とまあ食べるのが楽しみな人間にとって、食欲があっても食べるものがないとこれほど苦痛な入院生活はないわけで・・・お見舞いに来てくれる人にしょっぱいクラッカーや果物類を持ち込んでもらい、たまにデリバリー中華をそのまま持ってきてもらったりして面会室でこっそり食べたりとか。まぁそういうこともあって、『退院はなるべく速やかに』をモットーに2度目以降の手術に臨んだのは言うまでもありません!(つづく)

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2011年10月10日月曜日

オランダの医療事情8


さて手術の手続きをしている時に出てきた話題が病室のこと。担当看護師さんに「希望ある?男性と同室は嫌とか?」私は日本の病院のイメージしかなかったので、そんな病室に希望を言える事自体に驚き、せいぜい考えることができたのが「何人部屋なの?」という質問だけ・・・


8人位?となんとなく思っていたのですが、出てきた答えにびっくり!
そんなにたくさんいないわよ~!!!2人、多くても4人。でもあなたは多分二人になると思うわ。
その言葉通り、ラッキーにも二人部屋をあてがわれ、始めての入院となりました。

で、手術当日はまず自分の入院予定の病室のある棟へ向かいます。入院棟は担当科や入院期間によって分かれています。そして自分の病室に案内され、そこへ荷物を置き、渡された手術着に着替えます。必要な血液検査なども、入院病棟担当の看護師さんがしてくださり、準備の一部は病室でされます。患者はあとベッドに寝て待つだけ!

そして時間になると、そのままベッドごと手術控え室へ運ばれます。そこへ形成外科の先生が来てマジックで色々書いたり、麻酔医の質問に答えたり。さらに時間になると今度は手術室に運ばれます。ドラマなんかで見るよりずっと小さいし、なんと言っても寒いのには参りますね。こっちはほとんど裸に近いわけですから!といってもあっという間に麻酔で眠るんですが。

手術が終わって起こされると手術控え室に戻ってます。そしてそこで惰眠をむさぼり、いい加減寝たなぁと思う頃に病室に連れて戻ってもらえます。といっても手術当日は、麻酔とモルヒネのお陰(?)で延々と眠ることになり、夜中位にぱっちり目が覚め「お腹すいた~」というのがこれまでのパターンですね(笑)

ちなみに入院病棟には病棟の医者と看護師さんが3シフトでつめてらっしゃいます。朝の回診はこの病棟の医者と看護師さんの他に、自分の担当科の先生が交代でいらっしゃいます。ですから自分の担当の先生に会うのは週に1~2回程度で、あとは別の先生だったりします。そして、症状がやばい患者から回診が始まり、退院までわずかとなると時々回診を忘れられることも!←このいい加減さがまたオランダらしい!(爆)

ちなみに初めての手術で半死だった私。夜中にお腹がすいて目が覚めてから、なかなか寝付けなくて、やっと眠れた所をこの朝の回診で起こされました。元々、寝起きがめちゃくちゃ悪く「なんだよ、せっかく寝れたのに起こすなよ!(怒)」位の気分で目を開けたら10人位にベッドを囲まれて、眠気も一気にぶっ飛びました。そう、大学病院の先生にはそれぞれ見習いの先生や学生が必ず付き添うのでそれ位の人数になるんですね。しかも前夜に意識を飛ばしていたので、多分その日朝一番の回診は私ってことで勢ぞろいされたようで・・・(笑)

23日も入院してればなんとなく色んな事が見えてきます。まず病棟の看護師さんは毎回受け持つ病室が決まっているようで、シフトに入ったらすぐに挨拶にいらっしゃいます。「今朝は私があなたの担当でXXと言います。」そして自分一人で動けない患者は、この看護師さんに手伝ってもらって朝の身支度をします。シャワーに連れて行ってもらって一緒にシャワーをしたり、髪を洗ったり、傷口があってダメなときは体を拭いてもらったり。はい、毎朝です!そしてその際にシーツなども全部取り替えてもらえます。これも毎朝。

さらに私の場合は、外科で配属された担当看護師さん(例のアカウントマネージャーですね♪)も時間を作って顔を出され、知らない顔ばかり(そう、担当外科医がいきなり教授になっていたし!)で不安だった手術翌日、彼女の顔を見てすごくほっとしたのを覚えています。しかもオランダの病院食が食べられなくて、手術前日の夜~手術翌日の昼過ぎまで何も食べてなかった私に「何も食べてないんだって?普段何食べてるの?あなたは食事制限ないんだから、食べれるものを食べたらいいわ。家に電話して食べたいものを持ってきてもらいなさい。」というお許しまでもらい、家からデリバリー中華なんかお願いしてみたり♪

なんとなく入院って我慢を強いられると思い込んでいたので、逆に患者であっても人間らしい扱いを受けることができたことに驚きました。病室の人数も少ないし、看護師さん一人につき見ている患者数も多分日本より少ないんだと思います。ですから、忙しいだろうと呼び出しボタン押すのを遠慮してたら逆に「その為にボタンがあるんだから、押しなさいよ」と言われる始末。予想に反してかなり至れりつくせりの入院生活となりました。

但しオランダの場合、病院はそのサポートが本当に必要であると認められた人の為のみ。ですから、自分で起きてトイレに行けるようになれば、それで退院となります。私の場合は最初の手術で1週間入院でしたが、日本で同じような手術は2週間入院らしいので、相当違うことが分かると思います。ちなみに一人暮らしで、まだ食事が自分で作れないとかの場合は、Thuiszorg(自宅ケア)と言ってそういうのを手伝いに来てくれるサービスとセットで退院することになります。初めての時は「それってどうなの?」と思いましたが、結局寝てるだけなら家の方が落ち着くので、私も2度目の手術以降は、ドレーンという管がまだ体に付いたままで、オランダ人並みにサクサク退院させてもらってました。(つづく)

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2011年10月9日日曜日

オランダの医療事情7


世間一般に知られている乳癌の手術には色々な方法があります。が、私の場合は色んな状況からほとんど選択肢がなくて、唯一選べたのが、形成(胸の再建)をするかしないかです。

これを決めるにあたってとりあえずその専門科である形成外科の先生に相談する事にして、すぐに担当看護師さんにアポをとってもらいました。といっても外科と形成外科の外来はお隣同士でツーカーの仲なんですが(笑)

初めてで戸惑っている上に、医学用語のオランダ語が全く理解不能な私に、ゆっくり丁寧にサンプルや絵や写真を見せながら説明してくださる形成外科の先生。私の肌の状態をみてその手術方法や、再建のプロセスを分かるまでしっかり教えてくださいました。時間をはしょることもなく、わざわざ数回に分けて納得できるまで外来で時間を取ってくださったのは、患者として本当に有難かった事の一つです。

これは外科でも形成外科でもそうだったのですが、大学病院の先生は普段から医学部の学生を教えてらっしゃるだけあって、説明が本当に分かりやすいんですね。私の限られたオランダ語ボキャブラリーでは、色んな体の部位や組織の単語は全然分からなくて、言葉だけで理解できないこともしばしば。そんな時は絵を描いてくださったり、形成外科では紙とはさみで実際に手術の方法をデモしてくださったり。

最終的に形成も一緒にやってもらうと決めたら、後は手術の日を決めるだけ。その場合、外科だけのときに比べて手術までの待ち時間が長くなります。なぜなら外科医と形成外科医の二人が同時に手術できる日を選ばなくてはいけないからです。

まぁ手術中は当たり前ながらぐっすり寝ていたので(笑)、実際の所はどんな形で役割分担されているのか良く分かりませんが、説明を受けた限りでは、形成外科医が切る場所を決め、それに従って外科医が切って癌や乳腺などを取りだして、形成外科医が詰めて、閉じるということらしいです。

ただ1度目の手術の時は手術中に何かが起こったらしく(怖くて本当の話を詳しく聞き出してませんが・・・)、半死の状態で手術室を出て、知らないうちに外科の担当が教授になっていたというオチがあったのですが、とりあえず三途の川はまだ渡らずにすんだので(爆)、自分の生命力の強さに感謝するべきなんでしょう! (つづく)

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2011年10月8日土曜日

オランダの医療事情6

癌の告知を受けてから、決めておかなくてはならないことが二つありました。まず一つ目はどこで手術を受けるか、そしてそのままユトレヒトの大学病院で受けるのであれば、外科と形成外科を同時にするか、それとも形成はせずに外科だけにするか、ということでした。

これまで、ホームドクターの治療はあてにならない、そして運よく病院の専門科医に送ってもらったとしても、診てもらうまでの待ち時間はバカみたいに長くて、本当に何とかしてもらいたい時にどうにもしてもらえない、という経験を繰り返したせいか、オランダの医療レベルは低いとずっと思い込んでいました。しかも不器用なオランダ人に切って縫われてぐちゃぐちゃにされたら嫌だし、本当に手術を受けなければならないのであれば日本の方がいいんじゃないか?と実は本気で思っていたのです。

実際、失礼極まりないのを承知の上で外科の先生にストレートに聞きました。

「オランダの医療レベルは、この分野の世界的スタンダードでどうなんですか?余り高くないのであれば、日本で治療するということも考えてます。少なくとも日本の医療レベルは高いと思うのですが。」

長々と診察時間をとって、さらにこんな失礼な質問に対しても先生は怒る事もなく親切にこう答えてくださいました。

この癌は西洋人に多くアジア人には少ない種類です。その患者数や経験値を考えるとオランダの方が日本より多いでしょうし、だからそのスタンダードは平均以上だと思います。日本のレベルがどうかは私には分かりませんが、オランダに関して言えば、少なくとも低いということはないと言えると思います。

ついでに「君なんてアジア人で、しかもその歳でこの癌になるなんて、ほんとオランダ人になりすぎたねぇ」とも(爆)

そして日本の国立がんセンターで腫瘍外科医をしていた友人に電話をして、自分の状況の諸々を相談すると共に、「オランダと日本とどちらで治療を受けるべきか?」ということも聞いたのです。

彼女はわざわざオランダの状況も分かる範囲で調べてくれた上で、次のことを教えてくれました。

1. この種類の癌はスイスの国際学会で治療スタンダードが決められる為、世界のどこで治療を受けても基本的には同じ治療になるはず

2. そして癌治療は手術だけではなく、それ以外にも抗癌剤など色々あってすぐ終わるわけではない。つまり長引いてもその間ずっと日本にいられるのかどうか

3. さらに外科と形成を両方いっぺんにできることは実はとてもすごいことで、日本でもそれができる施設は限られている。その事からもオランダの治療レベルが低いとは考えられない。逆に同じ治療を日本でしようと思うと、病院を探すのも大変で、患者になれるかどうかも分からないうえに、患者になっても手術までさらに待たなくてはならない

「手術後に目が覚めて、英語もオランダ語も喋れなくなってたらどうしよう?」なんてことも頭をよぎったりしたのですが、この友人のアドバイスを聞いて、例え言葉や文化の違いがあっても「とりあえずオランダでなんとかしてみるか!」と思ったのです。最終的に今振り返ってみると、癌患者にいたれりつくせりのオランダで治療を受けて本当に良かったなぁと思うので、この友人には一生頭があがりませんね♪ 持つべきものは偉くなったお友達です♡ (つづく)


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2011年10月7日金曜日

オランダの医療事情5


実は癌の告知をされて一番困った事は、それをどのように両親に知らせるか。遠く海外での病気、しかも治療方針などに自分でまだ納得ができていない、それでも遅かれ少なかれ手術になるので知らせないといけない、でも知らせたらパニックになるほど心配するだろうなと。

職場の上司にはすぐに伝え、とりあえず自分のことに専念できる環境は提供してもらっていました。そして会社を休んで家にいてもよいとも。ただ、何かしていないと自分がどうかなってしまいそうなほど私自身が不安定だったので、あえて日常の生活パターンを崩さずに続けようと、会社にも行っていました。

とはいえ仕事に集中できるわけもなく、家でも泣いてわめいて喧嘩しての繰り返し。感情の起伏は激しすぎて、ジェットコースターにでも乗った気分。今考えるとあの頃の自分は躁と鬱を繰り返していたのではないかと思います。

そんなある日、全てを投げ出してしまいたくなったのをきっかけに「このままだと手術前に自分は死ぬんじゃないか」と。それで思いついたのが精神科医だったのです。

欧米では精神科医やカウンセリングというのは日本より一般的です。そこへ行く事で「キチガイ」というレッテルを貼られることもありません。これまで何があってもそんな所へ行こうと思った事はなかったのですが、今こそプロの助けが自分には必要なんだ!と。そしてまた担当看護師さんに連絡して精神科医を紹介してもらう事にしました。

大学病院内にも精神科か心療内科かあるはずなので、すぐに紹介してもらえるだろうと思っていたのですが、驚いた事に紹介されたのは大学病院外の施設。なんとオランダには癌専門の精神科(精神腫瘍科=サイコオンコロジー)の団体があったのです。

この団体では癌患者、その家族、そして医療関係者のための様々なカウンセリングやコースを提供しています。当然、癌に関係ないと行けませんから、ここもホームドクターからの紹介状があって初めて患者として受け入れてもらえる事になります。

ということで、初めて連絡した時にはお決まりの『順番待ち数週間』と言われたのですが、自分の状況を簡単に説明してその緊急性を話したら、キャンセルが出たら優先的に連絡してもらえる事になりました。そして運のいい事に、2日後にキャンセルが出たのでした。

そして私の担当カウンセラーは、自身も癌を患ったことのある人だったのです。彼女は癌治療の知識だけでなく、その状況で実際にどう感じるかを自ら知っていたのです。この事は私にとってはカウンセラーと信頼関係を作りやすかっただけでなく、時には「癌患者の先輩としてどう思うか」という質問を投げてアドバイスをもらったりすることができ、とても重宝しました。そして彼女のおかげで私は早々に鬱から抜け出し、家族へも知らせ、自分の状況を受け入れ、治療と向き合う事ができたともいえます。 (つづく)

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2011年10月6日木曜日

オランダの医療事情4

癌の告知と今後の治療方針などを聞き、手術に関する資料をもらって家に帰ってから、まずはPCを立ち上げ、思いつく限りネット検索を始めました。

そうすると病院では思いつかなかった質問がどんどん湧いてくるんです。ま、ぶっちゃけ自分が癌であるということを認めたくないので、別の病名の可能性はないのか、治療方針に含まれない選択肢はなぜ駄目なのか、別の医者でも同じ判断をするのか、治療は日本とオランダではどっちがいいのか、などなど。

はっきり言って、癌告知された直後は脳みそがショートしていた状態だった訳ですから、何を話したかもよく覚えていないのです。それで担当の看護師さんに電話。

色んな治療に関する質問については「もう一度外科医の先生と話した方がいいですね。アポをとるので、時間が決まったら連絡します。あなたからの質問はその時に答えてもらえるように先生には伝えておきます。」

そして外科治療と形成を同時にするかしないかの選択肢の検討の為、形成外科医ともアポをとってもらい、そして手術の順番待ちのリストに載っけてもらってその進捗状況を聞いたりと、毎日のように担当看護師さんと話してました。

この看護師さんの役割を分かりやすく言うと、病院とのやりとりをするにあたってアカウントマネージャーとして丸抱えで自分の面倒を見てもらっているようなものです。しかもこちらは慣れていないので、1を言えば10を理解してくれるサービス満点のゴールド会員にでもなった気分でした。

癌という病気になったというだけで、精神的ストレスは相当です。それに加え、自分で関係各課に連絡して、それをコーディネートして、なんて余分な仕事はできるはずもなく、これらを全部おまかせでやってもらえたというのはとても有難いことでしたし、そのおかげで病気とその治療に集中できたのではと思います。 (つづく)

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2011年10月5日水曜日

オランダの医療事情3

検査結果を聞きに病院に戻ったのが翌週の月曜日。ちょうどホームドクターにかかってから1週間後でした。結果は外科でとのことだったので、外科外来で待っていたのですが、いつまでたってもお呼びがかからない・・・

多分2時間半位待たされたのではなかったかと。そして漸く自分の番になって診察室に入って、外科の先生の「随分待たせてすみません。そしてさらに悪いニュースもあります。」という言葉から始まったあの日、正直自分で何をどう話したのか良く覚えてません。

ある日突然予期していない病名を告げられ、それが死に直結する事もあるもので、しかも世間一般で知られている治療方法の選択肢は自分にはない、しかも人生で初めての手術、そんな諸々をその場ですっと納得して飲み込める人はそうそういないのではないでしょうか。

結局その場で思いつく限りの質問をなんとかして、それに丁寧に答えてもらい、さらに触診があり、などとやっていたので多分1時間は外科の先生とお話ししていたのではないかと思います。

患者一人一人にそんな時間を費やしていたら、そりゃ2時間半待ちにもなるわな・・・

と、こういう状況でもそんなことを冷静に考えている自分がいたりして(笑)後日、日本にいる腫瘍外科医の友人にその事を話すと「そんなに時間が取れるの?いいなぁ、オランダは。きっと取捨選択がはっきりしてるんだね。」とのこと。これはこれまでの経験上思うに、癌治療の為には患者の精神状態をきちんとフォローすべきというポリシーがあるのではないかと。そしてその為にさらに専門の女性看護師の方が私の担当になってくださいました。

その日はその担当看護師さんから手術に関する資料をもらって家に帰っただけで、正直「担当って一体何してもらうんだろ?」と思った位なんですが、何かある度にとりあえずその方に聞けばいいという状況がこんなにも有難いことなんだというのを身をもって経験するまでそう時間はかかりませんでした。 (つづく)

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2011年10月4日火曜日

オランダの医療事情2

2008年、オランダの銀行でジャパンデスクヘッドというタイトルをもらって忙しくしていた頃、息抜きに休暇をとって友人たちと一緒にバリへ出かけました。そしてその南の島で休暇満喫中のある朝「これ何?」と思える兆候があったのです。

オランダに帰国してすぐ、月曜日の朝一番でホームドクターへ行って、問診&触診でホームドクターが青ざめてしまいました。肝心な私のほうは、「この歳で癌になる訳ない」というよく分からない変な自信があったので(笑)、ホームドクターにその場で「すぐに病院へ行くように」と言われても「じゃ、ちょっくら検査してもらって来ますか」位のノリでした。

前回にも書いた通り、病院の初診アポ待ち1ヶ月とかが当たり前のこの国。「どうせそれ位待たされるんでしょ」と思っていたらなんと10日後!

オランダにしてはめちゃくちゃ早いじゃん♪

と思ってたのですが、それでも「10日は長い。そんなに待たない方がいいから」って気をきかせて別の病院に電話をかけ始めたホームドクターのアシスタント。2件目の病院も同じく10日後。ダメもとで一番混雑していると思われるユトレヒト大学病院に電話してもらったら「2日後に来てください」ここからながーい治療の一歩が始まったことを考えると、全ての科がそろった大学病院の患者になった自分の強運に感謝してもしきれません。

そして2日後の水曜日、その大学病院に行ってレントゲンとエコーをとってもらいました。幸い自覚症状のあった所はやはりなんでもなかったという結果で「やっぱりね♪」と勝手に納得したのですが、その場でさらに「ちょっと気になる場所があるので、その組織をとってもうちょっと詳しく調べた方がいいですね。明日また来てください。」

翌日の木曜日、特別な機械&麻酔を使ったかなり大掛かりな検査は所要時間1時間半。今考えてみれば、そんな大変な検査は本当に『ヤバイ』ものでないとするはずがないって分かるのですが、その時はそんな事とは露知らず、のんきな私はそれでも自分の置かれている状況がそんなにヤバいとは思っていなかったのです。ですから検査後に「すぐ結果が知りたいと思うけど、申し訳ないけど週末明けるまで待ってもらって月曜日に結果を外科できいてください。」と言われた時には思わず「そんな急いでないし大丈夫ですよ。」と返事をしそうになったり・・・ そんなこんなで、周りはすでに結果を予測して先へすすんでいたにもかかわらず、私はまだホームドクターの診察からたった1週間で癌の告知をされるとはこの時点で夢にも思っていなかったのです。 (つづく)

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2011年10月3日月曜日

オランダの医療事情1

日本に帰国して腫瘍外科医の友人と話したり、患者さんからお話を聞いたりする度に、自分自身がラッキーにも手厚い治療をオランダで受けているということを実感しています。オランダでの医療現場が日本とどう違うのか、それらについて細かく書くと約束したので、これから時間を見て書いていきたいと思います。

まず、これまでの治療について触れる前に簡単にオランダの医療システムを説明しようと思います。オランダではホームドクター制のシステムとなっています。つまり国民はみな一人一人自分のかかりつけの医者であるホームドクターを持っています。そして体調だけでなく、鬱などの精神的なことも全てこのホームドクターへまず相談する事になります。

風邪をひいて薬をもらったり、インフルエンザ予防接種、ちょっとした湿疹の薬、中耳炎などの治療は大抵このホームドクターに数回かかれば終わりとなります。ところが、広く浅くのホームドクターの手に負えないやっかいな症状や、検査に特別な機器がいる場合は、ホームドクターの紹介で専門医にかかることになります。

専門医といえば、内科、外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、と色々あるのは日本と同じですが、オランダの場合、専門医は大きな(総合?)病院の専門医となります。つまり、日本の街中にあるいわゆる「XX医院」というような専門医は、一部の例外を除きほとんどありません。

このようにホームドクターから送られてきた患者はみな「簡単な症状ではない」と専門医にかかるわけですから、病院の専門医はいつも混雑する事になります。そして病院側も新規の患者を受け入れすぎると既存の患者を診れなくなるので、初めての診察アポまで1ヶ月も待たされるなどということはザラにあり、その間イライラして症状と付き合いながら専門医とのアポを待つという構図が出来上がるわけです。

ということで、「病院が本当に必要な患者に必要なケアができるように、ホームドクターは簡単に患者を専門医へ送る事はやめるべきだ」という意見がある一方、「ホームドクターは詳しくこの分野の事を知っているわけではないから早く専門医に診てもらいたい」という患者の意見もあり、この辺はオランダの社会問題でもあるわけです。

ということで、私自身もオランダに来てからなかなか専門医に診てもらえない、という経験を何度もしていた為、「ヤバい病気になったら専門医に診てもらえる頃には死んじゃってるんじゃない?」とよく冗談にしていた位です。ところが、自分が本当に『ヤバい病気』になった時に、この認識はとんでもない間違いである、ということに気づいたのでした。 (つづく)

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