2011年10月8日土曜日

オランダの医療事情6

癌の告知を受けてから、決めておかなくてはならないことが二つありました。まず一つ目はどこで手術を受けるか、そしてそのままユトレヒトの大学病院で受けるのであれば、外科と形成外科を同時にするか、それとも形成はせずに外科だけにするか、ということでした。

これまで、ホームドクターの治療はあてにならない、そして運よく病院の専門科医に送ってもらったとしても、診てもらうまでの待ち時間はバカみたいに長くて、本当に何とかしてもらいたい時にどうにもしてもらえない、という経験を繰り返したせいか、オランダの医療レベルは低いとずっと思い込んでいました。しかも不器用なオランダ人に切って縫われてぐちゃぐちゃにされたら嫌だし、本当に手術を受けなければならないのであれば日本の方がいいんじゃないか?と実は本気で思っていたのです。

実際、失礼極まりないのを承知の上で外科の先生にストレートに聞きました。

「オランダの医療レベルは、この分野の世界的スタンダードでどうなんですか?余り高くないのであれば、日本で治療するということも考えてます。少なくとも日本の医療レベルは高いと思うのですが。」

長々と診察時間をとって、さらにこんな失礼な質問に対しても先生は怒る事もなく親切にこう答えてくださいました。

この癌は西洋人に多くアジア人には少ない種類です。その患者数や経験値を考えるとオランダの方が日本より多いでしょうし、だからそのスタンダードは平均以上だと思います。日本のレベルがどうかは私には分かりませんが、オランダに関して言えば、少なくとも低いということはないと言えると思います。

ついでに「君なんてアジア人で、しかもその歳でこの癌になるなんて、ほんとオランダ人になりすぎたねぇ」とも(爆)

そして日本の国立がんセンターで腫瘍外科医をしていた友人に電話をして、自分の状況の諸々を相談すると共に、「オランダと日本とどちらで治療を受けるべきか?」ということも聞いたのです。

彼女はわざわざオランダの状況も分かる範囲で調べてくれた上で、次のことを教えてくれました。

1. この種類の癌はスイスの国際学会で治療スタンダードが決められる為、世界のどこで治療を受けても基本的には同じ治療になるはず

2. そして癌治療は手術だけではなく、それ以外にも抗癌剤など色々あってすぐ終わるわけではない。つまり長引いてもその間ずっと日本にいられるのかどうか

3. さらに外科と形成を両方いっぺんにできることは実はとてもすごいことで、日本でもそれができる施設は限られている。その事からもオランダの治療レベルが低いとは考えられない。逆に同じ治療を日本でしようと思うと、病院を探すのも大変で、患者になれるかどうかも分からないうえに、患者になっても手術までさらに待たなくてはならない

「手術後に目が覚めて、英語もオランダ語も喋れなくなってたらどうしよう?」なんてことも頭をよぎったりしたのですが、この友人のアドバイスを聞いて、例え言葉や文化の違いがあっても「とりあえずオランダでなんとかしてみるか!」と思ったのです。最終的に今振り返ってみると、癌患者にいたれりつくせりのオランダで治療を受けて本当に良かったなぁと思うので、この友人には一生頭があがりませんね♪ 持つべきものは偉くなったお友達です♡ (つづく)


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