2011年10月12日水曜日

オランダの医療事情10


唐突ですがオランダの所得税はとにかく高いです。初めて働きはじめた時、給料から差し引かれたのはその当時36%(?)とかだったと記憶していますが、それを聞いたうちの父親が言ったのは「お前、そんなに稼いでるのか?」初任給でそんないい給料をもらえるわけもなく、ただ単に所得税率が高かったというだけの話ですが、現在の累進課税で所得税の最高税率は52%。そう、一生懸命働けば働くほど政府が潤うようになっています。


この国に住んでお給料をもらう限り選択の余地は勿論ありません。ですから働いている頃は元々の給料額をみてから手取り額を見ると頭にくるので(笑)、ある時から手取り額しか見ないようになっていました。そして52%納税者に共通の考え「働いているものがバカを見るシステム」と長らく思っていました。そう、病気になるまでは・・・

考えが一転したのはいきなり大病をした時。その当時は働いていましたが、転職したばかりで1年契約だったのです。そして入院して治療を受けている間に契約は切れ、金融危機もあって契約更新はされずいきなり無職になったのですから、泣きっ面に蜂もいい所です。

ところがだてに52%もの所得税を取られているわけではないんですね。まず無職になると生活保護がでます。本来ならそんなに金額が出るわけではないのですが、「病気で働けない人」の為の生活保護は別カテゴリーとなり、これまでの給料70%(?)だかが無条件で最高2年まで支給されます。とはいっても当然上限があるので、私の場合はそれでもそれまでの給料の半分以下でしたが、でも普通に生活していくには困らない額です。

そして2年以上たつと今度は普通枠の生活保護になるはずなのですが、私の場合は「病気だから」とかなんとか色んな理由がついてこれまでとあまり変わらない額を支給されています。実際、病気の治療でさんざんな目にあっている時にお金の心配までしなくてすむというのは本当にありがたい話です。とはいっても私みたいな人間は不遜にも「これまで払った税金とりかえしてやる!!」位の気ではありますが・・・(笑)

さらに医療費は無料です。正確に言うと、国民保険はオランダに住む人は強制加入となります。月々の保険料は、保険会社に多少の差があるものの大体1万円弱位ではないかと思います。そして基本医療費(医者の診察料、必要不可欠な薬など)はこれで全てカバーされます。それ以外にオプションで歯医者の診察料、針や整体などの治療費、精神科医の診察料などをカバーする保険にアップグレードすることができます。私の場合は元々、細々と病気をしていたので、最大限アップグレードしていたのが病気してから役に立ちました。

ちなみにアメリカでも問題になっている保険料が払えない低所得者ですが、オランダの場合は政府から保険料の還付があります。つまり、そういう人たちは完全に無料で医療が受けることができると言えます。とはいえ、毎年最低限の自己負担額というのが設定されており、初めの15千円程度は自己負担をし、それ以上は保険でカバーされる仕組みになっています。つまり、全てが全て無料で医療費が垂れ流されている訳ではありません。

ちなみに私の治療を例にとって説明すると、ホームドクター、大学病院の診療、精神科医、抗癌剤中の交通費、処方される薬、理学療法士の治療、全てがカバーされました。さらに、抗癌剤中に髪の毛が抜けている間に着用したカツラ、抗癌剤後の癌患者の為のリハビリコースなども大部分の費用がカバーされました。さらに癌が遺伝だと分かった時点で毎年の自己負担額の一部還付までありました。理由は「遺伝の人の場合、定期健診や検査などが絶対に必要で、毎年自己負担額が発生し、それが不可避だから」なんとも至れりつくせりなシステムだなぁと思う訳です。

病気になって日本で治療を受けている癌患者の方とお話する機会があっていつも言われるのは「治療がタダなの?いいわねぇ~」確かに、抗癌剤1回の自己負担額を聞くと「これを毎回払えるかどうかが、自分の寿命を決める訳か?まさに命の値段だよな」と思います。が、日本とオランダの所得税率の違いを考えると、最終的な生涯コストにして計算すると同じなんではないかと。要は毎月チマチマ(って結構いい額ですが・・・汗)源泉徴収されて否応なく払うか、病気になった時にまとめて払うかの違いとでも言いましょうか。まぁそうやって考えると、日本の貯金額は世界一とかその昔言われていたのもそれなりに納得できるわけです。 (つづく)


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5 件のコメント:

  1. 初めまして!
    いきなりお邪魔します。
    2年後オランダに帰国未定で行く予定です。
    私は何も資格がないのでアルバイトから始めようと思っています。
    アルバイトでも医療費は無料になるのでしょうか?
    何か保険に入るつもりではいますが、どういうものに入ればいいのでしょう?
    全くの無知で申し訳ないのですが、詳しく教えていただくと助かります!

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    1. 西浦さま
      コメントありがとうございます。
      基本的にはオランダ在住者は国籍に関係なく健康保険に加入しなければいけないので、医療費はその保険で賄われるはずです。
      但し、オランダに住むには滞在許可、働く為には労働許可がなくてはいけませんので、日本でいうアルバイト的な形でオランダ滞在というのは難しいのではないかと思われます。(基本的にヨーロッパはどこの国も移民問題を抱えており、滞在許可や労働許可はなかなかおりないのが現状です)
      ということですので、詳細などについてはオランダ大使館へ直接お問合せになるのが良いのではないかと思います。

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  2. ありがとうございます!
    勉強になりました。
    いろいろ勉強しなきゃいけないことが沢山ありますね。
    大使館にも相談してみてある程度の下準備をしてから行こうと思ってます。
    ありがとうございました☆

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  3. はじめまして、こんにちは。
    先日起業ビザが発行され健康保険に入るためあちこちで条件を確認しているんです木山さんの仰る全額無料の健康保険とは違うものでしょうか?
    また違うとしたら木山さんのおっしゃる医療費が無料の健康保険はどのように加入できますか?質問ばかりで申し訳ありませんがぜひ教えていただけたらと思います。

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  4. 日本では日本の健康保険に入るのが義務とされているのと同様に、オランダでもオランダの健康保険に入るのが義務とされています。日本では仕事の違いなどで、国保や社保と分かれていますが、オランダの場合は民間委託されていて保険会社が異なる形です。
    日本の保険制度は国保、社保の関係なく保険適用治療は同じで、基本的に3割、年齢ごとに2割、1割となっていきますよね?オランダも政府が認めている保険適用治療はどの民間委託の保険会社を選んでも同じように適用されます。ただ日本と違ってその場合の個人負担額がないということです。(といっても年始めにかかる100ユーロ強だったかは自己負担しなくてはいけなかったかと記憶していますが。。。)
    ちなみに各民間委託の保険会社は、政府が認めている治療の他に毎月掛け金を足すことでさらに使える治療が増えるというサービスもやっていて各会社の特色を出して加入者を増やすようなことをやっています。分かりやすくいうと、月々もうちょっと払えば自費治療も一部保険で賄います的なサービスです。大人の矯正治療や、理学療法士、精神カウンセラーなどがそれらの中に入っていますので、自分が使いそうなサービスや治療があるならそういう内容を比べて保険会社を選ばれるとよいと思います。

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